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気になる内向き志向

 世界の耳目を集めているアメリカの大統領選挙はクリントン氏とトランプ氏による対立の構図が固まったようだ。共和党では、当初の予想に反して過激な発言を繰り返すトランプ氏が優位に立ち、党の主流派から冷遇されてきた原理主義者のクルーズ氏が追うという形で選挙戦が進んできた。共和党主流派候補の伝統的な訴えは支持を失い序盤戦で脱落した。民主党では本命のクリントン氏がリードを続けるが、こちらも既成の民主党の政治を批判し社会民主主義を主張するサンダース氏が善戦を続けている。こうした予想外の展開は、「アメリカ社会の政治不信が臨界点に達した」結果と言われる(潮6月号 三浦瑠麗氏)。冷戦後の世界秩序はアメリカやG7の国々が核となり、多くの国が協調し協力する形で形成されてきた。「冷戦後、経済のグローバリズムと民主制の二人三脚で世界の秩序が形成されて来たが、この二人三脚の仕組みが壊れかけ、この二つがぶつかり始めたというのがアメリカの予備選の伝えるメッセージだ」(佐々木毅東大名誉教授)と指摘される。アメリカ世論は、国際秩序への関わりよりも国内の経済政策や社会政策の転換を求め、ますます内向き志向を強めているように見える。イラク戦争の失敗や財政上の理由から孤立主義の傾向を強める風潮は、テロが繰り返される地域のみならずアメリカ以外の先進国でも強まっている。排外主義が各国で蔓延し、既存の政治勢力への批判が高まっている。イギリスではEU離脱を問う国民投票が実施される。各国政治は世界秩序に気配りする余裕がなくなりナショナリズムへの回帰が目立つ。経済成長は頭打ちになり、ますます内向き志向に拍車がかかる。
 こうした各国のナショナリズム政治は強権政治を産み、悲劇を繰り返して来たことは歴史が示している。第1次大戦後、ヴェルサイユ体制のもと国際連盟が設立された。だがアメリカはヨーロッパとの関わりを嫌う内向き姿勢の議会の反対で加盟しなかった。敗戦国のドイツ、ソ連も不参加だった。1929年、世界恐慌が起こると、英、仏は排他的なブロック体制を築き、米はニューデイール政策で乗り切ろうとした。各国は国際協調による打開よりも排外主義に走る。有効な打開策を持たないイタリア、ドイツでファシズム、ナチスが台頭する。日本でも、中国や欧米との協調を図る外交努力は「親英米派」と敵視され日中戦争から太平洋戦争へと至る。第1次大戦後、各国の内向き政治の結果、わずか20年で第2次大戦にいたる。
 冷戦後、圧倒的な力で世界をリードしてきたアメリカだが、すでにオバマ政権発足時からこれまでの指導力にかげりが見られていた。今回、大統領選で国際協調よりも排外主義の主張が優勢になり、アメリカの国際社会への関わり方は一層不透明さを増している。さて我が日本は、こうしたアメリカや国際社会の動向を見ながら、国際協調を基調に存在感を示して行けるだろうか。日本の政治もまた正念場を迎えている。

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