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楽観論で済むのかアメリカの変質

 アメリカ大統領選挙でのドナルド・トランプ氏の勝利は世界に衝撃を与え、論壇でも多くの分析や評論がなされている。
 経済運営では、所得税、法人税の大幅減税と大型公共投資などの「バラマキ」政策が実行されるだろうと予測され、当面はアメリカ景気が上向くだろうと想定されている。現に金利が上がり、ドル高現象が現れている。日本にも円安、株高の影響が及んでいる。だが、「米経済の好調は長続きしない、ドル高による輸出減退と輸入増で対外収支の赤字が増大する、財政赤字も膨らむ」と多くの経済学者やエコノミストが指摘する。そして国民の期待がはずれたとき保護主義が選択され、各国と貿易紛争が起こり、防衛問題などで他国に過大な要求をするなどの政策が選択される可能性が高い、と指摘する声が多い。
 こうした経済政策の心配とは別に、アメリカ民主主義の基盤が政治家や政党、国民の間で揺らいでいるのではないか、と懸念されている。建国の精神とも言うべき共和主義、民主主義は、職業、人種、性別、宗教など異質なものを認め合い寛容で他者へ配慮する姿勢が、脈々と流れ受け継がれてきた。知日派として知られるジョセフ・ナイ氏が指摘するように、アメリカは、軍事・経済の圧倒的力だけでなく、他国を文化的に、また価値観の上で惹きつける力で国際社会の覇権を維持してきた。だからこそアメリカ民主主義は、時として批判もあったが、世界中の多くの国々から尊敬の念を集めてきた。ところがトランプ氏の異質なものを排除する主張や、他国との協調を無視する発言がアメリカ国民の支持を得、大方の予想を覆す結果となり、多様性を尊重し配慮する多民族国家アメリカ自由主義の伝統の危機を感じる結果となった。宇野重規・東大教授の「保守主義とは何か」(中公新書)によれば、「保守主義とは単なる排外主義や復古主義でなく、根底に自由を必要とする。保守主義は伝統や習慣を尊重する立場だが伝統や習慣はただ固守すればいいのではなく、過去から受け継ぎながら更新し、未来へ引き渡して行くことが必要。その営みを進めるためには個人の自発性、それを許す自由な社会環境がなければならない」とする。こうした多様性と自由を尊重する立場は保守主義であれ、リベラリズムであれ、アメリカ社会の共通の認識だった。トランプ氏は、そうしたアメリカ政治や社会の伝統に真っ向から挑戦する言動で国民の支持を集めた。伝統的な保守の理念よりも、米国第一主義、内向き、保護主義が声高に主張された。選挙を通じて片隅へ追いやられた建国以来のアメリカの政治文化はどう変わって行くのだろうか。「選挙戦で言っていたことは、大統領に就任すれば修正せざるを得ない」という楽観論で済ますことは出来るのであろうか。アメリカ国民の精神の変質を懸念せざるを得ない。



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