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トランプ政権誕生と民主政

 イギリスのEU離脱、トランプ政権の誕生などでポピュリズム政治の評価が新聞や雑誌の論壇で盛んである。そもそも民主主義への懸念は古くからあった。政治史をひも解くと、すでに紀元前5世紀のギリシャのポリス(都市国家)では民主政の論議が盛んに行われていた。民主政では、民衆が独裁者になり専制政治を行う僭主を生み出し必然的に崩壊すると、プラトンやアリストテレスによって民主政の問題点が指摘された。だが民主主義が本格的に統治の仕組みの中心になるのはアメリカ独立革命とフランス革命以降である。
 アメリカ合衆国では「ザ・フェデラリスト」を書いたハミルトンなど、独立と建国に携わった人々の間で、民主政に対する弊害の除去に深い関心が寄せられていた。民主政は自由な政治参加が前提になっているが、それが多数派の暴走や横暴に繋がって行くことを、どのように阻止するか、が論議の焦点になった。彼等は、古代の民主政の欠陥を念頭に政治の仕組みを共和制と命名し、権力分立制を採用する。立法機関の権力が肥大し専制政治が行われることを避けるために、立法権、行政権、司法権の分離を定める。そして互いに抑制、均衡するために各機関の独立性も定める。それでも議会の強大化が懸念されることから、連邦議会を上下両院の2院制とし、もう一つ権力の抑制の仕組みを作る。こうして近代憲法としては初めてのアメリカ合衆国憲法が制定され、18世紀末のフランス革命にも大きな影響を与えることになる。その後、民主政は各国で様々な工夫がなされ議会制、大統領制などが定着してくる。だが民主政の歩みは古代から懸念され指摘されていたとおり何度かの危機を経験する。時折、各国で偏狭なポピュリズム政治やナショナリズム政治が横行したりヒトラーさえ生まれた。社会の亀裂や不安定化により強力な為政者への願望が絶えず形成され、民主政は常に煽動政治家による独裁制の危険と隣り合わせであった。
 トランプ氏は、激しい形相と身振りで吠えるような仕草でアメリカの苦境を訴え支持を拡げた。移民を排斥し、競争相手の国々に圧力をかければアメリカは豊かさと平穏を取り戻せる、と訴えた。まるでユダヤ人を唯一の敵として扇動したヒトラーを想起してしまうほどであった。こうした訴えに現状に不満を抱く人々は魅力的に感じた。そして当初、泡沫候補扱いされたトランプ氏は大方の予想を覆して大統領の座を射止める。今後、トランプ大統領がどのような政権運営を行うかは見通せない。だが選挙戦の過程を見ると、明らかに古代から指摘されてきた民主政の持つ課題を露呈した選挙ではなかったか。トランプ政権誕生を批判したり民主主義の堕落と指摘する声もある。だが、それはそもそも民主主義の持つ制度としての本質であることを理解する必要があると思える。民主政治は有権者が無理な要求を政治に求めたり、ただ日常生活の不満をすべて政治にぶつけるなどの行為で何度も危機を体験してきた。政治家も、有権者の情緒に訴えたり、出来もしない不可能な約束をしたりすることが繰り返されてきた。有権者、政治家双方がトランプ現象を冷静に受け止め、他山の石として民主政治の陥り易い欠陥を認識する機会にしたいものである。

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