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メデイアの曲がり角

 アメリカのトランプ現象、イギリスのEU離脱をめぐる国民投票、ヨーロッパ各国での極右政党の進出などナショナリズムとポピュリズムが世界中に拡がり論壇を賑やかしている。こうした現象とともに世論形成に大きな影響力を発揮してきたメデイアの変貌と在り方が問われている。トランプ氏は当初からニューヨークタイムスやCNNなど既存メデイアに敵意を剥き出しにする発言を繰り返した。そしてインターネットを通じツイッターなどSNSで自ら発信するメデイア戦略を取った。支持者はより強力に支持し、既存メデイアなど反対者は批判を強める。それもトランプ氏の計算の内だったとされる。またイギリスのEU離脱をめぐる国民投票でも二者択一を迫る投票行動でSNSが大きな影響力を発揮したという。最も成熟した民主主義国である両国で起きた「既存メデイアの敗北」とも言える現象は、これまで民主政を支えたメデイアの在り方に根本から見直しを迫るものだ。
 排外主義的なナショナリズムと国民の歓心を買うポピュリズムが世界に蔓延し、第一次、第2次大戦前の状況と酷似していると多くの歴史学者や政治学者が指摘する。それを加速しているのがネット社会だ。ネット社会の拡がりは多くの人々の政治参加や多様な言論を可能にした。だが短いフレーズで個人攻撃やデマ宣伝も瞬時に拡散する。トランプ氏の数々の暴言、イギリスのEU離脱派のEUへの莫大な拠出金を無くせば国民保健サービスが向上する、などはその最たる例だ。
 日本でも、これまで世論の形成に圧倒的な影響力を及ぼしてきたのは新聞、ラジオ、テレビ、雑誌などマスメデイアだった。大きな影響力を持つメデイアが情報を収集・整理し編集した上で読者・視聴者に伝え世論形成に処する役割を果たしてきた。そこには当然、メデイア側の価値観も働く。だが、インターネットの普及はすざましい。若い20代から40代の世代の人たちと話して見ると宅配の新聞を取っていない人が結構多い。情報の収集はネットとテレビで十分だという。日本のメデイア事情は地方紙などがあり欧米とは異なるとする見解もある。しかし、こうした世代の登場により日本でも欧米と同じ現象が生じる可能性は否定できない。最近出版された「政治を動かすメデイア」(佐々木毅元東大総長、芹川洋一日経新聞論説主幹共著、東京大学出版会)は、果たして日本のメデイアは偏狭なナショナリズムや浅薄なポピュリズムの防波堤たりうるか?と問題を提起する。
 近年、日本のメデイアは自らの主張を抑え客観報道を重視するよりは、自らの主張を前面に押し出した紙面や番組を制作する傾向が強まっている、と多くの識者が指摘する。勿論、メデイアが自らの立場を社論として主張し論調で競い合うことは大切なことだ。だが一紙しか読まない読者には異なる世界があらわれる。世論の分極化を招き、国民合意を難しくする面も見逃せない。メデイア側には黒か白かの選択を好むネット時代を認識し、客観的事実の収集・確認を怠らず、丁寧な編集作業を通じて多様な視点を提供する原点回帰の姿勢が求められているのではないだろうか。ネットの普及や格差の進行など社会の分断が一層進む中、メデイアは間違いなく曲がり角に立っている。
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